Microsoft Power Platform が提供するローコードなデジタル化手法より、世界中の何千もの組織がテクノロジーを使用して業務変革ができるようになりました。 これまで以上に多くの人々がアプリケーションを作成できるようにし、モバイルプラットフォームや人工技術を活用して、新しい働き方で組織を変革することで実現します。

デジタル変革は今まで以上に重要です。 テクノロジーはすべての業界を混乱させていますが、繁栄している業界が持つ、成功の鍵でもあります。 2020年の新型コロナウイルス感染は、従来のITリスク計画のアプローチが、デジタル変革によって提供される俊敏性のメリットに匹敵しないことを示しています。 デジタル変革の旅を段階的に行いつつ、すぐに始めることが重要です。 もちろん、Microsoft Power Platformのような幅広い適用性を備えた新しいテクノロジを採用することは、どの組織にとっても時間のかかる事でもあります。

私が所属する Power CAT チーム(カスタマーアドバイザリーチーム)は、Microsoft Power Platform の製品開発部門に属している、ソリューションアーキテクトで構成されており、Power Platform を採用したお客様を対象に活用をさらに促進させる活動を行っています。 最も成功しているお客様の一部と協力して、Power Platformを 使用して包括的なデジタル変革を行う際に、成功する組織の進歩を支える一貫したテーマ、パターン、ベストプラクティス、および行動を特定しました。 その成熟度を表すのが、「Power CAT 活用成熟度モデル」です。

このモデルは、能力成熟度モデルに基づいて、このプロセスを5つの段階に分けています。

レベル 100
初期段階
レベル 200
管理された状態
レベル 300
制度化された状態
レベル 400
制御できる状態
レベル 500
最適化している状態
Power Platform での部分的な成功や実験。 戦略やガバナンスは実施されていません。アプリはチーム毎に作成されており、外部ベンダーやIT企業によって運用・開発されています。組織は戦略的投資の可能性を認識していますが、明確な道筋はありません。IT部門や業務改善部門、経営戦略部門などによって実装された初期の Power Platform の管理。組織で広く使用されるようになっているアプリケーションの特定を開始します。これらの組織は、Power Platformの利用が「制御不能」な状況に陥っていると考える場合があります。反復可能な管理手法の標準化。 組織はデジタル変革に成功し始めており、 効果測定可能な結果が得られている。定義された Power Platform Center of Excellence のチームが存在する。変革は依然として有機的な成長である可能性があります。Power Platform を管理および監視するための標準プロセスが確立されている。Power Platformの機能は、ビジネスを幅広く変革するために使用されており、ミッションクリティカルなアプリや統合に使用されています。プラットフォームを活用するエキスパートはチャネルを確立しました。 組織は、Power Platform の機能で ミッションクリティカルな業務で変革できることを実証しています。社内の専門家・エキスパートが在籍する、確立されたコミュニティが存在。 フュージョンチーム(開発部門と業務部門の合同チーム)は、レガシー機能と最新のクラウドアーキテクチャを簡単に使用できるようにします。

各段階では、戦略とビジョン、管理、ガバナンスなどの個々の分野の状態を説明します。モデルの目的は、組織が明確に定義されたスケールで複数の次元に沿って能力を理解し、達成したいレベルを決定するための物差しとして利用することです。 各次元とどの時間枠で、具体的な方法でそれらの機能を向上させることで 次のレベルに進みます。 これらの段階はチェックリストではなく、すべての分野に沿って同じペースで進行する必要はありませんが、組織の進行状況をチェックし、さらに前進するためにどこに焦点を合わせる必要があるかを把握するために使用できます。

目的と機会:

Power CAT 活用成熟度モデルの目標は、組織やパートナー(SIer、コンサル会社など)が機能を改善する方法を検討し、どの機能が最も重要かを判断できるようにすることです。 これらの決定は、テクノロジー機能だけでなく、組織のデジタルトランス変革戦略に基づいて行う必要があります。

それでは、各ステージとそれらの機会について詳細を見ていきましょう:

レベル 100初期段階

(有機的、混沌とした、場当たり的な利用、個々の英雄が存在):このフェーズでは、新しいプロセスまたは文書化されていないプロセスを使用するための開始点について説明します。

初期段階では、組織にはPower Platformの成功または実験が断片的に開始されていますが、組織全体での採用と使用についての可視性はありません。 全体的な戦略やガバナンスのアプローチはなく、アプリは主にデフォルト環境にあり、DLP(データ損失ポリシー)は導入されていません。 アプリは主に単一のチームによって使用され、メーカーによってサポートされています。 アプリは主に Excel と SharePoint をデータソースとして使用します。 組織は、Power Platform への戦略的投資の可能性を認識していますが、組織全体で実行するための明確な道筋はありません。

次のレベルに向けての行動:
トレーニングイベントやハッカソン、ランチ勉強会を開催する社内チャンピョンを特定・育成し、初期導入に対する成功を社内で認知する Power Platform の採用を実行するために必要な役割と責任を確認しながら、主要な社内のスポンサー(役員や部門長など)とチームを参加させます。

レベル 200管理された状態

このフェーズでは、同じ手順を繰り返すことができるように、少なくとも十分に文書化されているプロセスについて説明します。

反復可能な段階にある組織は、多くの場合、IT部門またはPower Platform の管理チームなどによって実装された制御を通じて 初期段階で学んだことを取り入れて、Power Platform の展開を構造化しています。Center of Excellence スターターキットは、Power Platform の利用状況に関するテナント全体の可視性を提供し、組織で広く使用され始めているアプリケーションを制御しない場合でも、特定し、棚卸し始めるために展開されます。環境は必要に応じて使用されますが、場当たり的な方法で使用されます。たとえば、さまざまな本番環境やさまざまなデータ損失ポリシーが、一貫した戦略なしで作成される可能性があります。 これらの組織は、Power Platform で利用可能な管理およびガバナンス制御の使用を形成し、定義済みステージに移行するまで、Power Platform の使用が「制御不能」になっていると考えられる場合があります。

次のレベルに向けての行動:
テナント全体を可視化し、テナントで作成されているアプリやフローを把握できるようにします既定の環境でデータ損失ポリシーを設定します。ポリシー設定前には DLPインパクト診断 を行い、アプリやフローがDLP設定後も引き続き動作することを確認します。新たに利用を始めた従業員にはようこそメールを送信し、社内のトレーニングサイトや、ルールについて周知します。

レベル 300 – 制度化された状態

このフェーズでは、標準の業務プロセスとして定義/確認するべきプロセスについて説明します。

定義済みの組織は、反復可能フェーズで進化した反復可能な手法を標準化しています。たとえば、環境とデータ損失ポリシーの要求は自動化され、ソリューションは環境間でアプリとフローを移動するために使用され、アプリ・フロー作成者は共通のコンポーネントを共有し始めています。この組織は、Power Platform を使用してデジタル変革を行うことで測定可能な成功を収めており、社内で Power Platform Center of Excellenceチームが定義されています。この変革の多くは、組織をこの時点に到達させた有機的な成長を反映している可能性がありますが、Center of Excellence チームは、これらのプロセスを自動化し、組織を対応可能な段階に移行させる標準的なアプローチを定義するよう取り組んでいます。

次のレベルに向けての行動:
環境構成の戦略を考え、組織の生産性を高めるためのセキュリティ設定を構成し、並行して活用に向け、必要な人材を確保します。アプリケーションに対する社内のサポートレベルを定義します。サポートレベルの判断にはアプリの複雑さ、組織にとっての重要度、利用する人数などが影響します。アプリ・フロー作成者やチャンピョンと一緒に成功体験を共有し、組織に与えるビジネス価値とインパクトについて評価します。

レベル 400制御できる状態

このフェーズでは、合意された指標に従って定量的に管理されるプロセスを説明します。

このレベルの組織には、Power Platform を管理および監視するための標準的なプロセスがあります。 レベル300 で定義されたこれらのプロセスは、現在、大部分が自動化されており、 アプリ・フロー 作成者によって十分に理解されています。 Power Platformの機能は、ビジネスを幅広く変革するために使用されており、エンタープライズクリティカルなアプリや統合に使用されています。 プラットフォームチャンピオンは、ベストプラクティスを社内で共有し、新しい作成者をトレーニングしたり、定期的にハッカソンを実施するためのチャネルを確立しています。 標準のブランドテンプレートとコンポーネントが提供され、すべてのアプリ・フロー作成者が利用できます。 Power Platform の影響を測定および理解するために、ビジネス価値の評価が実施されます。

次のレベルに向けての行動:
アプリカタログを作成し、より多くの人が見つけられるようにし、アプリの重複を避けます。
共通のコンポーネントライブラリーを作成することでヘッダーやメニュー画面など、よく利用するデザインパターンをテンプレート化することでどのアプリでも共通した操作体験を提供します。
Center of Excellence チーム、IT部門、管理部門とのコミュニケーションを 承認ワークフローや Teamsメッセージを利用することで自動化します。社内の導入推進における役割を明確化し、管理者も作成者も全員同じ共通の認識を持つようにします。

レベル 500最適化している状態

このフェーズでは、合意された指標に従って定量的に管理されるプロセスを説明します。

Power Platform の世界では、このレベルに達すると最も効率的な段階に達しています。組織は Power Platform の機能がミッションクリティカルな機能を素早く提供できることを証明しました。標準化・自動化されたプロセスと確立された専門家のコミュニティにより、新しいデジタル化の機会を迅速に実装できるため、組織は価値をすばやく認識し、人工知能(AI)などのより高度な機能の統合を始められます。フュージョンチーム(開発部門と業務部門の協働)により、Power Platform 内でレガシー機能と最新のクラウドアーキテクチャを簡単に組み合わせて使用できるようになり、既存のデータを幅広く利用でき、 自動化できるようになります。この段階にある組織では、Power Platform は組織のデジタル変革戦略とエンタープライズアーキテクチャの重要な部分として機能しています。主要な段階にある組織は、コミュニティのベストプラクティスに影響を与え、Power Platform の新しい使用を推進します。

次のレベルに向けての行動:
誰でもアイデアを投稿できるようにし、課題を共有し、最も人気・課題となっている問題を優先してアイデアを基に開発します。キャリア形成の一環としても活用できます。ダッシュボードを公開し、プラットフォームがもたらすインパクトを社内に共有します。アプリケーションライフサイクルの管理を単純化します。それにより、作成者はより簡単に開発したものを管理し、展開できます。ストーリーを共有し、ベストプラクティスを我々(マイクロソフト)にも世界にも提供することで、世界のリーダーと共に成功させていきましょう。

詳細のレベル表

各ステージ毎の詳細はこちらの表をご覧ください。

レベル 100
初期段階
レベル 200
管理された状態
レベル 300
制度化された状態
レベル 400
制御できる状態
レベル 500
最適化している状態
ビジョンと戦略
  • 業務部門(現場)からのイノベーションによる改革
  • 低い複雑性のシナリオ
  • 部分的な再利用
  • 未定義の戦略
  • IT部門と業務部門の共通のビジョン
  • 需要管理プロセスの確立
  • 専任の Power Platform 担当者
  • 現場からもトップからも出てくるイノベーション
  • 組織のITで Power Platform の役割が定義されている
  • Center of Excellence チームが確立されている
  • 効率化されたデリバリー(開発)により、素早く業務要求へ対応できる
  • 部門を横断してビジネスプランが共有されている
  • Power Platform はデジタル変革の戦略の主なツールと位置づけられている
  • 全員からビジョンと戦略が理解されている
  • 組織全体で取り組む、より大規模なアプリも開発される
  • 組織のアーキテクチャ像に Power Platform も含まれる
ビジネス価値
  • 曖昧なビジネス価値の評価
  • 目標が明確化されていない
  • 曖昧なビジネス価値の評価
  • 利用シーンなどは特定されているものの、レビューされていない
  • 指標が定義・定量化され、目標に対して比較されている
  • 高い付加価値のアイデアが優先的に開発対象とされている
  • ビジネスにおける課題が事前に定量化されており、プロジェクト開始前と終了時に比較されている
  • 「全体像」を把握するダッシュボードにより、 Power Platform の全体的な付加価値を可視化し、業務エリアに合わせても評価している
  • 高度なレポートとダッシュボードにより、適切な判断を行い、価値の評価を行っている
  • 経営層も Power Platform によるソリューションのビジネスインパクトと付加価値を把握している
管理とガバナンス
  • 誰でも環境を自由に作成できる
  • データ損失ポリシーを設定していない
  • 必要以上に共有されている、利用されていない、作成者が不明等のアプリやフローは自動で特定され、適宜対処されている
  • 業務用件やコンプライアンス情報を自動で収集できる仕組みを確立している
  • CoE スターターキット – ガバナンスモジュール を利用し、コンプライアンスへの対応と、リソースのアーカイブを行っている
  • ミッションクリティカルなアプリをテレメトリー情報で特定する
  • Power Platform 管理チームがテナントの整備を行っている
  • 作成者の役割が明確化され、作成者にも理解されており、自動で新たな作成者に連絡が行われている
  • Teams のチャットボットなどを利用し、管理業務が自動化され、タスクの自動割り当てや自動承認、複数段階承認が行われている – (例:業務部門マネ―ジャー→ITセキュリティ担当→テナント/環境管理者)
  • 組織内で成功した手法は外部コミュニティイベントやマイクロソフトと共有されている
運用・保守
  • 作成者が自分たちで保守している
  • ITや業務部門で保守のルールが明確化されておらず不明
  • 社内コミュニティ内でのサポート
  • ある一定のガバナンスを提供し、ソリューションライフサイクルを管理
  • 社内ヘルプデスクでの対応がサポート戦略に含まれる
  • サポートレベルが明確に定義されている(IT部門がサポート、IT部門がチケットベースでサポート、作成者がサポート)
  • 専任のサポートチームが存在
  • ビジネス戦略に沿って計画が継続的に改善されている
  • 各役割と責任が明確になっている
  • サポート業務が自動化されている(所有者の変更、FAQのボット化、環境の自動配布など)
  • 各役割と責任が明確になっており、ソリューションの作成と運用方法が全員に理解されている
市民開発者の育成
  • 一部の従業員がトレーニングを受けた
  • 部門内での市民開発者の育成が構想されている
  • チャンピョン向けのイベントが定期開催されている
  • 定期的なハッカソン
  • 作成者向け評価と表彰制度
  • 成功体験について社内で共有・発表・表彰している
  • 社内事例紹介を行う
  • 活用イベントを行う
  • 社内コミュニティが拡大する
  • 作成者にとっての社内キャリア育成になっている
  • メンター制度が確立されている
  • 社内開発部門と市民開発者が共通の開発戦略とゴールを持っている
自動化
  • プロセスはすべて手作業で場当たり的に行われている
  • プロセスは標準化されているものの、手作業で行われている
  • 環境構成、データ損失ポリシーは自動で設定されている
  • アプリは手動で展開されているが、ソリューション管理されている
  • 管理者・作成者間のプロセスやコンプライアンスに関する連絡は自動化されている
  • アプリケーションライフサイクルのプロセスは定義されており、集中管理されている
  • 必要以上に共有されているアプリや、利用されていないアプリ、作成者不在のアプリなどは自動で特定・管理されている
  • コンプライアンスやサポート情報などのガバナンスの業務は自動化されている
  • アプリケーションライフサイクルのプロセスはフュージョンチーム単位で管理されている
  • 環境のライフサイクル管理は自動化されている
  • CoE スターターキット – ALM Accelerator が導入されている
フュージョンチーム
  • チーム・部門は単独・分断化されている
  • Power Platform がプロの開発者に利用されていない
  • チーム・部門間で作ったものをレビューしている
  • プロの開発者は高付加価値の利用シナリオで開発を試している
  • 作成者・テスター・運用チーム含め、組織・役割を横断して共同で計画・実行している
  • 変更管理やインフラ計画も共同で行われている
  • データモデルが共通化・標準化されることでデータの再利用を加速化させている
  • チームはスキルの必要性に応じたチームを柔軟に確立できる
  • 新規のプロジェクトでは市民開発者・プロ開発者共通の開発戦略とゴールが確立されている