Lotus Notes からPowerAppsへ脱出する際に検討するポイント
Lotus Notesから脱出したい方が多く、PowerAppsを移行先として検討する場合のポイントをまとめました。
少し私情ですが、実は私もLotus Notes 6.5.2の時代を2013年までWindows 7のXPモードで頑張っていた時期があり、苦しめられた経緯があります。
Lotus NotesとPowerAppsの長所と短所
他の製品同様、それぞれの製品には長所と短所があります。そこで何が優れているか、改めておさらいみました。あくまでも個人的主観ですので、参考レベルとしてお考えください。
製品・機能 | Lotus Notes | PowerApps |
ディスカッション | 自由な階層を持てる。簡単に物事の経緯が追える。 | テーブルと同じような表でのみデータを持つ。短所はSQLなどのRDBと同じのため、親子関係・リレーションを作成し、設定する必要がある。
会話形式の物はMicrosoft Teamsで対応した方が良い。チャネルやグループという考え、さらには関連した添付ファイルやPowerAppsもタブとして埋め込める。 |
フィールドの自由度 | テキストの途中で画像やファイルを貼り付けできる。日報のような利用シーンでは未だに最強。ただし、その内容を分析するという考えはない。 | Common Data Service 利用時は、考え方はSQLなどのRDBと同じなため、コンテンツに合わせてフィールドを分ける必要がある。
自由度は文字のフォントや色、サイズまで。 |
ビュー | 自由に作成・変更が可能 | ギャラリー機能が同等の機能。ラベルを増やすことで列が自由配置で増やせる。
ギャラリーの中にギャラリーも設置可能。画像の列や一覧に対するボタンなども設置可能。 |
索引 | 大量データには対応できない | Common Data Service のベースはSQLということもあり、何も問題ない。高負荷の場合は自動でスケール。
(世界最大のデータベースでは月間500万件以上のトランズアクションに対応) |
レプリカ・レプリケーション | 設計のみのレプリケーション
データ+設計のレプリケーション |
設計のみの場合はPowerAppsアプリを別名で保存
データはPowerAppsと切り離されているため、データ元でレプリケーションが必要。 |
テンプレート | テンプレートを利用することでアプリ作成時に設計を統一させる | アプリのエクスポートでテンプレートをZIPファイルで保存、新規アプリ作成時に新たなアプリとしてインポート。 |
ワークフロー | 3段階承認ワークフローなどが作成可能。 | 段階の管理はPowerAppsのアプリ内で作成必要。各段階の承認要求はMicrosoft Flowを利用。
上長の情報はAzure ADにあらかじめ設定していれば自動取得も可能。 |
格納後の分析 | 開発時の時代はデータは格納と参照のみ前提のため、めちゃくちゃ不便。DataSpiderなどのサードパーティー製サービスを利用して抽出し、別システムからの分析が必須。 | Common Data Serviceを利用すればPower BIと標準連携。今後AIがプリセットで用意されるPower BI Insightsなどもリリースされる見込み。 |
データ連携 | 苦手。Lotus Enterprise Integratorでマッピング実装。Oracle 9/10/11、SQL Server、DB2など | Microsoft Flowによるレコード単位(文書単位)でのノンコーディング連携は230種類のサービスと連携、Common Data Serviceを利用するとデータ統合機能により、70種類以上のデータへバッチでもノンコーディング連携。
Excelと連携させて、Excelのなかで直接データの追加や修正、削除も可能(権限があれば) |
ログイン | 基本独自ログイン・AD連携は可能。 | O365連携が標準。セキュリティはO365セキュリティグループもしくは個人で定義。 |
権限 | アクセス制御リスト(ACL)をベースとした独自のグループによる設定。
以下のグループでFix 作成者 編集者 設計者 読者 管理者 フィールド単位の制御・動的な表示非表示は基本カスタマイズで対応。 |
Common Data Serviceを利用すればLotus Notesのような権限に加え、さらに以下の機能もある。
レコード単位(文書単位)での共有、別の所有者(作成者)への割り当て。 行レベルセキュリティ、列レベルも可能。 |
アプリケーション管理 | あきらめた方がいい。
もう数千個(数万個?)あるはず。 |
各アプリの利用状況をダッシュボードで把握、Microsoft Flowによる「アプリ作成・公開の運用ワークフロー」も作成できてしまう。PowerShellにも対応。
環境を事業部単位や国単位などでわけて、それぞれアプリ作成者権限等の設定もOffice 365セキュリティーグループをベースにできる。 |
モバイル | もともとモバイルを使う構想がなかった製品のため、無理やり感があきらめた方がいい。 (Lotus Notes Traveller) |
iOS、Android、ウェブブラウザにすべて対応 |
GDPR | 2000年にはそのような考えはありませんでした。 | 詳細はこちらを参照 |
総括:PowerAppsを利用する場合、合わせてCommon Data Serviceを利用しないとLotus Notesからの意味のある、本格的な移行は難しい
Office 365などにもPowerAppsは「PowerApps for Office 365」という形で提供されていますが、その場合はデータの保存先はSharepointになるのですが、データの権限に対する考え方がLotus Notesの方がSharePointよりも優れていたり、SharepointはLotus Notesと同じ集計には向いていなかったり、ワークフローが弱かったりと機能が不足してしまいます。その点、Common Data ServiceはLotus Notesよりもさらにしっかりとしたセキュリティ機能を持っており、集計にも対応できるので、移行先としては十分考えられるのではないでしょうか。
少し辛口にLotus Notesについて書きましたが、結論からいうと、流行していた当時は好きな形式で日報など書き込んでいるのは良かったかもしれませんが、10年経ったいま、同じ要件のまま移行することに意味はありません。同じお金と時間をかけて移行するのであれば、移行によりメリットが得られるものを選びましょう。単純な移行はコストにしかなりません。
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