Microsoft Ignite 2022 では、Microsoft Power Automate の革新的な機能として、市民開発者やプロの開発者が新しい方法による自動化と、大規模の展開をAIで実現できることが発表されました。

新しい方法での自動化

説明するだけで自動的にAIがフローを構成

フローを作成することは Power Automate の基本ですが、自動化したいことを文章で記述すると、AIを搭載したCopilot機能が数秒でフローを構築してくれます。検索や推測は不要で、ただ記述するだけで、Copilot が魔法のように作成してくれるのです。

この新しいフロー作成方法は、自然言語をコードに翻訳できるGPT-3系列のAIモデル、OpenAI Codexで実行され、 ここではコードの代わりに Power Automate のクラウドフローに変換されます。これは、GitHub CopilotやPower Apps Ideas(プレビュー)を支える仕組みと同じ技術です。このIgnite の発表では、Microsoft 365の主要なコネクタのみをサポートしていますが、今後数カ月でさらに拡充していく予定です。

詳細はこちらのドキュメント(英語)から確認できます。

サンプルを入力するだけで自動で関数へ変換

多くの場合、時間をかけて学習しない限り、データを特定の方法で操作するための式を書くことは困難です。今回、Microsoft Ignite では新機能として、サンプルデータを例として入力するだけで書式設定できるようにすることで、ユーザーにとって非常に使用方法が簡単になりました。

PROSE を用いて Power Apps Ideas(プレビュー)で行ったことと同様に、Power Automateにも、同様の体験を提供しました。

これにより、AI Copilot を使って、データを必要な書式に整形することが簡単にできます。クラウドフロー内でテキスト、日付、数字をフォーマットしたい場合、欲しい出力の例を入力するだけで、Copilot が自動的に必要な数式を生成します。

詳細と使用開始方法については、「例によるデータの書式設定」のドキュメントページを参照してください。

AI Builder の進化

AI Builderは、Microsoft Power Platform の中の一つの機能で、ワークフローにAI(インテリジェンス)を追加するための、すぐに使えるAIソリューションを提供するための重要な要素となっています。AI Builder の中で最も利用頻度の高い機能は文書処理のAIですが、その理由は文書処理がいかに手間で時間がかかるものだからです。

今回の Microsoft Ignite の発表では、インテリジェントな 文書処理機能の最新機能アップデートにより、さらに使い勝手が向上しました。

非構造化ドキュメントへの対応が一般公開

非構造化ドキュメントへの対応が一般公開になりました。これにより契約書や、作業明細書、手紙などの自由形式の文書からデータを抽出できるようになりました。

構造化されていない文書のサポートが一般的に利用可能になり、契約書、作業明細書、手紙などの自由形式の文書からデータを抽出することができます。

カスタムドキュメントソリューションでAIモデルのフィードバックループを構築

更に、 多くのデータが処理されるため、精度が重要です。そこで、カスタムドキュメントソリューション(プレビュー版)を導入し、信頼度スコアが低い文書にフラグを立て、モデルを再トレーニングして精度を向上させる機能を提供します。

複数ページのテーブルに対応

複数ページにまたがるテーブルの抽出が可能になりました。複数ページにまたがるテーブルの抽出では、抽出したいデータに対してモデルを学習させ、このプロセスを簡素化することができるようになりました。手書きの日本語を含む164の言語に対応したことで、AI Builderによる文書処理はかつてないほど容易になりました。

請求書処理モデルは、オランダ語、英語、フランス語、ドイツ語、イタリア語、ポルトガル語、スペイン語の請求書を自動処理することができます。これらのアップデートにより、ユーザーエクスペリエンスがシンプルかつ正確になり、より戦略的なビジネスプロセスに集中するための貴重な時間に費やすことができます。

新しい領域での自動化

Power Virtual Agents を活用した会話による自動化

今年の初めに Power Virtual Agents に新しいインテリジェントなボットの作成方法を公開することを発表しました。2022年11月10日から、この新しい作成方法がプレビューで自動的にオンになります。この新しい作成方法は、Microsoft Azure Bot Framework Composer と Power Virtual Agents のボット構築方法を融合させた、ローコードとプロコードの機能を統一させたものです。プロコードとローコードのユーザーは、Power Fxやコードビューなどの最新機能を活用しながら、同時開発やコメント機能で一緒にチャットボットを開発することができます。

さらに、ハイパーオートメーションを搭載した会話型ボットを導入するシナリオも数多く用意されます。魅力的なアダプティブカードの構築、Power Automateの800種類以上のコネクタからのデータの表示、Power Fxによるデータの操作と変換など、自動化とコミュニケーションに関する新しい体験が提供されるのです。

新しいソリューションによるSAPの自動化

2022年9月の Microsoft Power Platform Conference では、SAP ERPコネクタに加えられた、Power Platform へのSAPシステムとの接続と、フロー作成者がPower Automate フロー内でSAPの複雑なアプリケーションプログラムインターフェース(API)と連携できる機能の強化について詳細を発表しました。

今回発表したもう一つの素晴らしい発表は、コネクターの強化に加え、更にパワーアップしたものです。ダウンロード可能な構築済みSAP統合ソリューションは、Power Apps テンプレート、Power Automate フロー、およびその他のコンポーネントで構成されており、Power Platformを使用した SAPシステムとの デジタル変革を根本的に容易にします。このソリューションは、ユーザーにSAPの基幹機能のビューを提供すると同時に、それらを支えるワークフローを自動化します。まずは、プレビューのドキュメント(英語)をご覧ください。

Excel Online での自動化の純正機能

自動化に適したシナリオのトップは Excel を使った作業で、データ入力、データ管理、レポート作成などの手動で面倒な繰り返し作業を行うことが一般的です。今回の Ignite の発表で、Power Automate を Excel Online にネイティブに統合し、Excel の中で完結できることに合わせて、あらかじめ作成されたテンプレートを使ってカスタムフローを作成できるようになりました。Excel Onlineのリボンには「自動化」タブが追加されました。このタブをクリックし、「タスクの自動化」を選択すると、Microsoft Forms や SharePoint などの一般的なアプリケーションと Excel を自動化するためのテンプレートが表示されます。

埋め込まれた体験でも自動化

Power AutomateのCloud Embed プログラムに WorkFusion と DocuSign が加わりました。Cloud Embed プログラムは、独立系ソフトウェアベンダー(ISV)が Power Automate を自社のユーザーエクスペリエンス(UX)に直接組み込むことができるようにするものです。

WorkFusionは、既存のDigital Worker 機能の補完として Power Automate のRPAを活用し、デスクトップフロー用に加わる新しいMicrosoft Dataverse APIを使用する予定です。デスクトップフローのAPIを独自のシナリオで使い始める方法については、コードを使用したデスクトップフローでのドキュメントページをご覧ください。

DocuSignは、Power Automate の Cloud Embed プログラムへの新しいアプローチを開拓しています。このアプローチでは、DocuSign eSignatureのお客様は、Power Automate のスタンドアロンライセンスを購入することなく、Power Automate のプレミアム機能を活用した自動化を構築することができます。 この機能は、今後数週間のうちに Power Automate のコネクターパブリッシャーに展開される予定です。

Power Automate へのコネクター構築を検討しているISVの方は、ウェブサイトにアクセスして新しい ISV Cloud Embed プログラム(英語)の詳細をご確認ください。プレビューに参加するには、Cloud Embed プログラム(英語)に登録してください。

新しい方法で導入を加速

ハイパーオートメーションの実践を管理、統制、拡張するための2つの新しいソリューションキットをご紹介します。

Automation Kit で導入推進を加速

あらゆる業務の効率化・自動化を組織的に展開し、推進を目指している組織は、「Automation Center of Excellence」の構築を検討する必要があります。これにより、組織の投資を最大化し、ルールを定義して、デジタル変革のためのRPAやその他のハイパーオートメーションのシナリオを、管理された方法でより強力に開発することが可能になります。

業界の「ベストプラクティス」に基づいて組織の自動化を加速させるための「Automation Kit」をオープンソースのGitHubプロジェクトとして立ち上げました。このキットは、すでに Power Platform をハイパーオートメーションの選択肢として使用している世界中のお客様のフィードバックから作成されました。この新しい自動化キットの詳細については、こちらをご覧ください。

承認テンプレート(Business Approvals Templates)で複雑な承認ワークフローに対応

あらゆる業界、あらゆる部署で見られる重要なユースケースの1つが承認ワークフローです。Power Automate は、承認ワークフローをデジタル化することで、ビジネスを効率化することができます。

Ignite では、承認構築プロセスを加速させるためのテンプレート、「Business Approvals Templates」の限定公開プレビューを発表しました。

少し本文の発表内容から脱線しますが、このテンプレートは私、吉田ともう一人の同僚の2名でひっそりと進めてきたプロジェクトで、「承認ワークフローテンプレートを世界のために作ることにした」と宣言してから他の業務と並行しながら1年かけて進めてきた、肝いりのプロジェクトです。

Business Approvals templates は、Power Platformのコンポーネント上に構築され、ローコードすら要らない、コードが一切不要のテンプレートで、もちろん、日本の企業や組織が最も必要とする承認ワークフローのシナリオを考慮し、条件分岐、委任、管理者の上書き、多段階承認、差戻しなどの高度な承認を、すべて1つのコードも書かずに設定することができます。これらの機能はすべて、コミュニティの皆さんの声や、世界中のお客様からヒアリングした上で実装しました。

このBusiness Approvals templates はすべての人が、組織の承認のニーズに対して「より少ない労力で多くのことを行う」ことを可能にします。

Two screens showing the business approvals process manager areas

詳細はこちらのドキュメントをご覧ください。

ホスト型RPAボットで導入を加速

Power Automate は、一般にロボティックプロセスオートメーションやRPAと呼ばれるデスクトップオートメーションのために、独自のインフラを利用方法をすでに提供しています。

マシンの直接接続やマシングループなどの機能により、マシンのセットアップやPower Automate 環境への登録が簡単にできるようになっています。さらに、Power Automate のホスト型RPAボットのプレビューだけでなく、 さらに一歩踏み込んだサービスとして無人RPAシナリオを管理する機能を提供します。ホスト型RPAボットは、無人RPAを大規模に実行することができ、完全にクラウドでホストされています。

ホスティング型RPAボットの設定は簡単で、いくつかのパラメータを指定するだけです。名前、このグループに割り当てる並列ボットの最大数、使用するベースの仮想イメージとアカウントを指定するだけで、準備は完了です。

デフォルトの仮想イメージでも、Web自動化には十分なWindowsのイメージを提供しています。しかし、特定のデスクトップアプリケーションでより高度な自動化が必要な場合、Azure Compute Gallery との統合により、独自の仮想マシン(VM)イメージを持ち込むことができるようになりました。ホスティング型RPAボットは、お客様のニーズに応じて自動的にスケールします。需要の急増に対応できるようになり、インフラにかかる費用を実際に必要なものだけに最適化することができます。また、ホスティング型RPAボットは、さまざまな自動化シナリオでリソースを共有することも可能です。例えば、10台のボットを2つのグループ(営業担当と財務担当)で共有することができます。10台のボットは、必要に応じてどちらのチームの目的にも動的に割り当てることができます。

RPAツール移行を更に加速

従来のRPAソリューションの多くはサイロ化されており、ビジネスの規模に合わせて拡張することが困難です。新たに適切なテクノロジー・製品を選択し、自動化するプロセスを特定し、最適なアーキテクチャで実装することは、新たな課題となり得ます。また、RPAプラットフォームへの投資を決定し、投資収益率(ROI)を証明するための時間が限られている場合は、さらに困難となります。これは、一度に複数の自動化を構築するスケールアウト型の実装でなければ達成できません。このような場合、ツールやサービスを利用してRPAプラットフォームを素早くアップデートすることを可能にする、RPAツールの移行によってのみ、ROIを達成することが可能です。

このたび、Power AutomateへのRPAモダナイゼーションを加速させるために、パッケージ化されたツールやサービスを提供するエコシステムの戦略的パートナーが公開されました。さらに、ビジネス意思決定者の視点から移行を成功させるために役立つRPA移行のホワイトペーパーも用意されています。

Power Automate へのRPA移行についてと、RPA移行ツールとサービスが成功の要因となったお客様事例、Pacific Gas and Electric社についての詳細はこちらから閲覧できます(英語)