Microsoft Teams用 Project Oakdale に関する機能と Common Data Service の違いについて
Microsoft Inspire では、Teams 用の新しいデータプラットフォーム「Project Oakdale」を発表しました。
Project Oakdale は、Teams のためのローコードなデータプラットフォームとして組み込まれ、Microsoft Power Apps と Microsoft Power Virtual Agents を用いてだれでも簡単にアプリやインテリジェントなチャットボットを作成・展開したりすることが可能となります。
この投稿では更にProject Oakdale に関する詳細についてご紹介し、Project Oakdale と Common Data Service の違いについて解説します。主にデータの取り扱いやアプリケーションの作成、ソリューション開発、環境や連携、セキュリティに関する部分について触れていきます。
データ
Project Oakdale はリレーショナルデータ(親子関係などの構造化データ)に対応し、データを検索、フィルター、並び替えなどができます。また、文字列や数値などの主なデータタイプに対応しつつ、画像やファイルにも対応します。Project Oakdale は Common Data Service の恩恵を受け、通貨やロールアップ計算、計算項目も搭載します。
Project Oakdale により、新しい編集可能なグリッド(エディタブルグリッド)によって、素早くテーブル/表を作成し、データもExcelのように入力することが可能です。Common Data Model(CDM)としては、既定でユーザーテーブルが搭載されており、今後様々なテーブルが追加される予定となっております。
Common Data Service は上記の Project Oakdale に加え、ログなどの非構造化データへも対応し、データレイクの管理や、関連性検索、モバイルでの利用用途におけるオフライン対応も可能です。さらに、高度なデータタイプや、豊富なCommon Data Model へも対応しています。
アクティビティやタイムライン機能は Common Data Service のみに搭載されており、 Project Oakdale ではすでにTeams 上に似たような機能が含まれているため、搭載されていません。.
この投稿(2020年7月30日現在)、AI Builder はProject Oakdale では対応していません。これらの機能を利用する場合には Common Data Service へのアップグレードが必要となります。
データ関連の比較表 | Project Oakdale | Common Data Service |
構造化データ | ● | ● |
添付ファイル・画像への対応 | ● | ● |
検索、フィルター、並び替え | ● | ● |
主なデータタイプ | ● | ● |
Common Data Model | 近日公開 | ● |
モバイルオフライン対応 | ● | |
関連性検索 | ● |
アプリ作成とソリューション開発
Teams では自分で資料を作成したり、同僚と一緒にコラボレーションしたり、他の信頼できる場所から情報を得たりと人々は様々な方法でコラボレーションを行います。
Power Platform と Project Oakdale の組み合わせにより、アプリやチャットボット、自動化フローやデータでも、同じような体験が得られるようになります。Microsoft Teams 内で作成するためのローコード/ノーコードのアプリケーションのためのソリューションが Project Oakdale には含まれています。
作成したアプリケーションやソリューションを自分自身で作るだけでなく、ギャラリーから信頼できる発行元からソリューションやテンプレートを見つけることができ、簡単にインストールし、組織のためにカスタマイズすることも可能です。将来的には Project Oakdale から従来の方法のソリューションのインポート・エクスポートも可能となる予定です。
データの可視化は様々なソリューションで重要な役目を果たします。そのため Project Oakdale でもチャートやグラフでの対応が可能となり、Common Data Service では更にページ型のレポートにも対応します。
Project Oakdale ではPower Automate を用いてワークフローを作成することが前提となり、Common Data Service のように業務ルールやクラシックワークフロー機能は搭載されていません。
Project Oakdale はローコード・ノーコードな開発を主な目的としているため、開発者向けのAPIアクセスや、プラグインに関しては対応しておらず、Common Data Service が必要となります。
モデル駆動型アプリへの対応は、現在 Common Data Service でのみご利用いただけますが、Project Oakdale にも年内に対応する予定です。
Teams での利用に加え、Common Data Service ネイティブにExcel からもアクセスでき、Microsoft Outlookと同期したり、モバイル・ウェブ・デスクトップで実行できる、パワフルなアプリケーションが作成できます。
アプリケーション作成とソリューション開発 | Project Oakdale | Common Data Service |
データの可視化 | ● | ● |
ページ型レポート (SSRS) | ● | |
開発者向けの機能 | ||
API アクセス | ● | |
プラグイン | ● |
環境
Project Oakdale や Common Data Service のデータは「環境」に保存される仕組みになっています。 Project Oakdale ではMicrosoft Teams 上のチーム1つに対し、1つの Project Oakdale 環境が作成され、その環境上で業務データやアプリ、チャットボット、ワークフローが作れるようになります。各環境ではバックアップがサポートされ、任意で復旧させることが可能で、可用性も担保されます。Project Oakdale に格納されるのは業務データと画像、添付ファイルが含まれます。1環境では2GBの容量が含まれており*1、およそ100万行まで格納することができます。
管理をしやすくするため、Project Oakdale の環境は作成された Microsoft Teams のチームと関連付けられます。チームを作成した場合は、その Project Oakdale 環境も削除されます。
Microsoft Teams 用の Project Oakdale はチームに特化した環境構成なのに比べ、 Common Data Service では環境は無制限に作成でき、複数環境が構築できるため、環境のコピーやリセットも可能です。
環境のライフサイクル | Project Oakdale | Common Data Service |
環境の最大サイズ | チームごとに1つの環境 | 無制限 |
100万行または 2GBまで |
4TB以上*2 | |
Common Data Service/Dynamics 365へのアップグレード | ● | ● |
注意1)Project Oakdale の容量と Common Data Service の容量は干渉しないため、別々の容量管理となります。
注意2)Common Data Service の技術的な容量を意味しており、実際にはライセンスにあわせて容量の制限があります。
セキュリティ
Microsoft Teams上でのコラボレーションは組織内に限らず外部とも発生するため、このような利用用途でも対応可能なシンプルなセキュリティモデルが採用されています。Project Oakdale は、Microsoft Teams 上で設定された役割(所有者、メンバー、ゲスト)に合わせて、同じようにセキュリティロールが初期状態では設定されます。
Project Oakdale でも Common Data Service でもアクティビティのログ(誰がレコードを作成したか等)を取得することができますが、Common Data Service では更に高度な監査機能も搭載されています。.
Common Data Service は特定の Teams 環境に紐付いているわけではないため、より多くのセキュリティ設定が可能となっています。また、フィールドレベル(項目レベル)セキュリティの設定や、組織階層型セキュリティ、レガシー認証へのサポートやデータベースの暗号化キーも独自のモノを設定できます。
例)承認ワークフローを Project Oakdale 上で作成した場合、「回覧」を行うために該当の申請のみのレコードを共有したりしたい時にはレコードの共有が必要となるため、Common Data Service が必要となります。
セキュリティ | Project Oakdale | Common Data Service |
管理者ロール | System Admin & System Customizer | ● |
ユーザーロール | チーム管理者、メンバーとゲスト | ● |
アクティビティログ | ● | ● |
部署 | 1つのみ | ● |
監査 | ● | |
独自管理の暗号化キー | ● | |
フィールドレベルセキュリティ | ● | |
階層型セキュリティ | ● | |
レコードの共有 | ● |
他システムとの連携
業務アプリケーションはSaaSサービスや社内システム/データとの連携が必要だったりします。Project Oakdale と Common Data Service のどちらにもパワフルな連携機能が備わっています。
Project Oakdale では、連携の方法は主にコネクタを用いた方法となります。スタンダードコネクタに加え、Common Data Service コネクタを利用して、Project Oakdale へアクセスが可能です。プレミアムライセンス(Power Apps 単体ライセンス)をお持ちの場合は更に350種類以上ものプレミアムコネクタも利用可能となります。これにより、Project Oakdale からのテーブルのデータを外部と連携したり、逆に取り込んだりすることもできるようになります。
Common Data Service でもコネクタが利用可能ですが、更に搭載された様々な連携手法があり、データレイクへのエクスポートや、Event Hub、Service BusやWebhooks を用いた連携も可能です。また、SQL Server のように扱える、TDSサポートも選べます。
Common Data Service からはサーバーサイド同期を用いてExchange サーバやPOP3サーバとのメール連携にも対応し、データエクスポートサービスを利用して、Microsoft Azure SQL のデータベースに同期させることもできます。
連携 | Project Oakdale | Common Data Service |
Power Automate | スタンダードコネクタ+Dataflexのみ | すべてのコネクタ |
データレイクへのエクスポート | ● | |
データエクスポートサービス | ● | |
Event Hub 連携 | ● | |
Service Bus 連携 | ● | |
Webhooks | ● | |
サーバサイド同期 | ● | |
SQL Server Management Studio 対応 | ● |
前段でも触れた通り、Project Oakdale はローコード・ノーコードに特化しているため、APIアクセスは不可となっています。API連携が必要な場合は、Dataflex Proが必要となります。
まとめ
この投稿では、Microsoft Teams の為の Project Oakdale に関する情報をご紹介し、Common Data Serviceとの違いについても触れました。
Project Oakdale は Microsoft Teams ライセンスの一部として含まれ、1つのProject Oakdale に対して100万行まで対応し、Teams 内でのローコード・ノーコードなアプリケーション作成が可能となります。必要な場合は Common Data Service へのアップグレードが簡単に行えるため、様々なソリューションを躊躇せず作成することができます。
それでは是非素晴らしいソリューションを Project Oakdale と Common Data Service を用いて作成ください!
※日本時間2020年8月12日付けでこの投稿は更新されました。Project Oakdaleは暫定的な名前であり、後日正式名が公開される予定です。
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