シアトル会場からこんにちは。吉田です!今年もMicrosoft Build の時間がやってきました。この投稿では Microsoft CEO の Satya Nadella が発表した、キーノートの内容をまとめてお送りします。

はじめに

Edge Copilot の動画から始まりました。「この時代のAIで開発者と祝う短い動画のための文章を書いて。この動画はMicrosoft Buildのオープニングで利用します。感動的なものにしてください。そして…」

「私たちはAIの新しい時代に突入しようとしています。創造する速度と同じ速度で開発でき…」

「クリエイティビティは無限となり」

「そして、より大きな課題に取り組むことができます」

「未来を作り上げ、人類の進歩を加速させるために今日、貢献できるように」

「その未来を一緒に作り上げましょう」

また皆さんに対面であえて光栄です。いま、プラットフォームの変革が訪れようとしているこの時に、 このような開発者カンファレンスは特別な場所(Microsoft Build )となります。 私にとっても1991年に初めてMousconiセンターで開催された開発者向けのカンファレンス「 PDC 」に参加したことで私の人生が変わりました。

去年の夏に Mitchel 氏が執筆した「Dream Machine」の本を読みつつ、DV-3(当時GPT-4になる前のコードネーム)で遊んでいたときにこれが何なのかの全体像が見えてきたのです。Dream Machine のコンセプトは過去70年間我々が行ってきたことをよくとらえています。

Steve Jobs 氏は、コンピューターは脳にとって自転車をこぐような体験だと言っていたのですが、去年11月、そこにアップグレードがもたらされました。我々はChatGPT によって自転車をこぐ世界から、蒸気機関の時代へと突入したのです。AIプラットフォームにとっての大きな変革点となったのです。私たち開発者は、ではそれをどうやって活用するのか、わくわくするときでもあります。ソフトウェアスタックのすべてのレイヤーにおいて、変革が起きていきます。我々開発者によって「どのように」開発するかが抜本的に変わります。

Codespacesで瞬時にコードが書けるようになり

開発環境はMicrosoft Dev Boxによって数日から数時間で用意できるようになり

GitHub Copilotによって、全体的な開発の流れや生産性を(およそ54%)向上させます。

GitHub Actions と Azure Development Environments によってCLIだけで完結したり、するような世界観が実現しようとしています。

私にとって、開発する楽しさとプログラミングの流れをもたらせることが素晴らしいのです。

ですので、どのように開発するか(How we build)は大幅に変わりますが、この開発者向けカンファレンスの大きなポイントは「何を開発するか」(What we build)です。

そして、今年1月、私があたかも「たくさんプレスリリースを出そう」と言ったかのようにたくさんリリースが出ていますが、毎週のように新しいものが実際に開発されており、GitHub のCopilotから始まり、Power Platform 向け Copilotをリリースし、生産性においては Microsoft 365 や Vivaに Copilot をリリースし、我々はこのAIをすべての(テクノロジー)スタックで組み込もうとしているのです。

今回50種類以上の新機能をリリースしましたが、ここでは私は5つ取り上げたいと思います。

Bing を ChatGPTへ提供

我々はBing のグラウンディング機能を ChatGPTに持ってきました。

ChatGPTは最も利用されている消費者向けアプリですが、検索のグラウンディングは非常に重要な機能の一つです。 これによって最新の情報をグラウンディングさせた状態でクロールとインデックスができ、無償版のChatGPTでも利用できます。これはまだ始まりにすぎません。

Windows Copilot の発表

そして今回、最も利用されているWindows にもCopilotを持ってきます。詳細は別途Panos氏のセッションで詳細に話されますが、これによってすべてのユーザーがWindows のパワーユーザーになると思います。

Windows に組み込まれている

統合されたAIアシスタントによって「仕事の生産性を上げるためにシステムの設定を変更したい」というだけで自動で提案。

パソコンの操作も提案内容からワンクリックで利用

ドキュメントとも連携が可能で、たとえばPDFファイルを要約したりすることがドラッグアンドドロップで実現

Windows Copilot によってさまざまなタスクを完了させられます。(デモ動画ではSpotifyから音楽のプレイリストを再生)

プラグインを利用することで業務フローをよりシンプルに

そのまま Microsoft Teams へメッセージとして送信したりすることもできます。

Windows Copilot は全体的に生産性をあげてくれるのです。

Copilot stack の発表

Copilot 関連をすべて1つのCopilot stackとして搭載しすることでAIインフラストラクチャーからAIオーケストレーション、プラグインでの拡張性まで、Copilot を皆さんが利用できるように包括的に提供します。

そしてCopilot を拡張させるためのプラグインはすべて共通したもので、ChatGPT、Bing Chat、Microsoft 365 CopilotなどのどのCopilotにも皆さんが独自に作成したCopilot モデルを組み込むことが可能となり、これによって開発者の皆さんが作ったプラグインは何億ものユーザーが利用できるのです。

Copilot &プラグインのデモ

今日、我々はChatGPTをBingを密に連携させることで、よりタイムリーかつ的確な回答をします。

実際にChatGPTを起動すると既定でBingが選ばれています。これによりリアルタイムでクエリを投げることができ、Build と.NETの情報を聞いてみます。

すると最新の情報が取得されるだけでなく、どこから取得したかリンクが張られているのでそのままそのページに移動することもできます。

プラグインをBing Chatでも ChatGPT でも双方向で互換性を持つので、1回プラグインを書いてしまえばどこからでも利用できます。

Zillow(不動産サービス)とInstacartがChatGPTで有効化されていることがわかります。

これらはもちろんBing でも利用できます。

これによって、例えば私が住んでいるシカゴの不動産である販売価格の範囲から最適な3つの物件を提案してくれました。これらのエクスペリエンスはウェブ全体でBingによって使えるようになったのです。

例えばウェブページからレシピの材料だけを集約し、Instacartプラグインで買い物リストに入れることができます。

契約書を書く時にCopilotを活用し、Thomson Reutersなどのプラグインを利用することで、瞬時に契約文を生成することができます。

カリフォルニア州の州法に適合しているかも別のWestlawプラグインで確認することもできてしまうのです。

Teams チャットでCopilot を利用すると、チケット管理サービスのJiraへそのまま新しいチケットを登録することもできます。

Windows Copilot デモ

よりPCを生産的に利用したいとします。そんなときは、直接Windows からCopilotを起動し、Bing Chatを利用したり、チャット形式でフォーカスモードをオンにしたり、コーディングに向いている音楽を聴いたりすることもチャットだけで実現できます

Azure AI Studio の発表

これはAIのライフサイクルを実現するためのツール群であり、インテリジェントなアプリケーションやCopilot を皆さんが開発できるようにします。

自分の独自モデルを学習させたり、自分のデータを利用するときのOpenAI やOSSモデルのグラウンディングを実装したり、組み込まれたAzure Search のベクターインデックスを活用したりもできます。RAG(Retrieval Augmented Generation)は簡単に行え、プロンプトフロー機能やオーケストレーション機能により、プロンプトエンジニアリングも簡単に組めるようになっています。そして最も重要なAIセーフティ機能は標準搭載です。

Azure AI Safety の発表

我々が最も重要視してきたのが、AI セーフティを機能として組み込むことです。我々は過去5年間もAIモデルを開発してきた知見や、理念はコアなプロセスの一部として組み込んできましたし、もちろんコンプライアンスの準拠なども行ってきました。ですが重要なのが、これらが開発以外の部分だけでなく、開発そのものにも組み込まれていることです。それをAI Studioで実現するのです。

テスト機能では、責任あるAI(Responsible AI)ダッシュボードを搭載しており、テスト機能により作成しようとしているAIが安全かを事前にテストすることができます。プロンプトフローにより、プロンプト文をグランディングさせられます。

出典(Provenance)によって、 Bing や Designer で利用される画像や動画データに対しての出典などが行え、カスタムニューラル音声ではオーディオのウォーターマークができます。

デプロイ時には例えばOSSモデルを採用し、AI セーフティサービスを利用することもできます。もちろん、モデルのパフォーマンスをモニタリングすることも可能です。それによって作成して終わりではなく、継続的に改善することもできます。

AI Studioによって、次世代AIモデルを開発、カスタマイズ、学習、評価、展開までのAIライフサイクルを包括的に提供し、責任あるAIを実現します。

構造化・非構造化データをすぐにデータ元として利用しつつグラウンディングを適用できます。

開発者は新しいモデルカタログで、Azure OpenAI や、Hugging Faceなどの人気のあるAIモデルや、その他のオープンソースのAIモデルを利用できます。

プロンプトフローにより、開発者は組織の様々なデータを組み合わせてより的確なプロンプト結果を作り上げられます。プロンプトフローは自社モデルもオープンソースモデルも組み合わせて利用することができ、LangChainやSemantic Kernelなどの 人気のある ツール群で構成できます。

更に作成されたAIは我々のAI理念に合わせるため、Azure AI Content Safetyを利用することによって、皆さんが作ったAIモデルを安全に活用することが可能になるのです。

Microsoft Fabric の発表

もちろん、どのAIアプリケーションもまずはデータからはじまります。そこで今回、Microsoft Fabric を発表します。この製品は過去数年間かけて非常に注力していたサービスです。

おそらく、Microsoft Fabric は Microsoft SQL の発表以降、データプラットフォーム製品群の中で最も大型なアップデート内容に関する発表です。コンピューティングとストレージを統合するだけでなく、分析機能群、データガバナンス、そしてビジネスモデルまでも包括的に提供するのです。これにより、SQL、マシンラーニング、どのジョブであったとしても、同じコンピューティングリソースが利用できます。この統合は次世代のAIに向けた「燃料源」となるのです。

1つの製品で、1つの統合された体験、1つの分析プラットフォーム、1つのビジネスモデルとプラットフォームとして提供します。

組織の統合されたデータは1つのSaaS型データレイクに格納されます。データはオープンフォーマットで保存されており、同じデータをマシンラーニングモデルの構築にも、可視化にも利用できます。

SQLクエリをデータレイクでも、データウェアハウスでも実行できます。

統合された機能で、データ管理者はすべての機能を活用でき、

データの可能にパイプラインを利用したり、

セマンティックモデルを構築し主要な指標を定義したりと様々なことが実現できます。

ビジネスユーザーにとっては、Microsoft Fabric により、コラボレーションやMicrosoft 365で必要に応じた分析も可能です。

包括的なガバナンス機能により、セキュリティとコンプライアンスも提供します。

AIがインフラストラクチャーレイヤーに与えたインパクトのように、Microsoft Fabric は同じようなインパクトを次世代のAIのためのデータ層に与えることになります。

今日私がお話した内容は50以上の発表内容のほんの5つです。このカンファレンスでぜひほかの45個の発表についてみていただければと思います。我々はこれから素早く、次世代のアプリケーションを作れるように様々な機能群を提供していきますが、必ず安全第一で進めていきます。

1つ我々が考えなければいけないのが「なぜ開発するのか?」(Why do we build)です。我々はなぜテクノロジーを開発するのか?

実は、経済の成長と合わせて、テクノロジーの成長も関連しています。見ると衝撃的です。人類が始まったほとんどの期間、あまり大きな進歩はありませんでしたが、250年前に大きな変化が訪れたのです。急に成長のカーブが上がっていることがこの図でわかります。そして過去70年間で情報技術によって、さらに大きな変化をもたらしました。そして今、AIによって、この成長曲線がどのように描かれるか、我々人類が舵を握っているのです。ですが、我々は単純に経済的成長のために開発しているわけではありません。我々人類そのものが成長できるようにも開発しているのです。

我々は世界的に平均寿命を延ばしたいですし、教育推進も促進させ、誰もがより良い生活水準を得られるようにしたいと考えています。そのために開発しているのです。そのためにテクノロジーが存在するのです。技術のためではなく、それに伴う大きなインパクトを与えるために。

この考えは私が1月にインドを訪問しているときに見せてもらったデモで、私に大きな影響を与えました。このテクノロジーは、本当にすべての人間に影響を与えるのだと。2つ学んだ点があります。1つが、開発するものは8億人以上の人口に影響を与えることもできます。 そしてそれを可能にするには、数年とかではなく、数日、数か月という期間で。

我々はテクノロジーに信頼をもたらせられるようにしたいですし、我々は(人権的)権利を保護したいと考えています。それが我々のエネルギー源であり、我々のミッションである、「すべての人とすべての組織がより多くを成し遂げられるように」を実現するのです。

最後にこの動画で締めたいと思います。(公開後、この動画へのリンクにアップデート予定です)