今回は技術的観点ではなく、思想的・ビジョンという観点でMicrosoft Power Automate(旧名Microsoft Flow)と今までのRPAとの違い・比較ポイントについてお話します。

そもそもRPAではない

MicrosoftはPower AutomateをRPAのサービスとしては紹介しておらず、「プロセス自動化サービス」として説明しています。その理由として、Power Automateにとって、RPAは1つの機能に過ぎず、より広い視野・自動化を考えているからです。


RPAが必要とされる根本的理由は、既存の業務で利用しているソフトウェアでも、インターネットに接続されていない環境や、外部連携機能が備わっていない場合など、画面操作をするしかない場合に最も適しています。クラウドサービスや外部連携が可能な場合は、画面操作を経由して連携させるのではなく、システム同士で連携させるほうが、画面上のエラー処理を設定したりする必要性もなく、より簡単に連携させることができます。そのため、マイクロソフトとしてはRPA機能はどうしても画面操作が必要な場合などの「最後の砦」として、2019年の11月にRPA機能を既存のPower Automateに搭載させたのです。

最初から「DPA」を搭載している

すでにPower Automateを利用されていた方には朗報ですが、Power AutomateはDPA(デジタルプロセスオートメーション)というサービスとしてもともと生まれたものでした。上記で述べた通り、画面操作を必要とないサービスは直接連携させてしまったほうが設定の効率は上がり、エラーになるリスクも下がります。Office 365やDynamics 365などはもちろんのこと、KintoneやSalesforce、HotProfileなど、クラウド型のSaaSサービスとシームレスにノンコーディングで連携し、様々な処理をすでに自動化させることができます。その数、275個以上にも現在はなっており、日々この数は増えています。


例えばOutlookで受信したメールをもとに、件名から自動でメールを振り分け、該当するメールのみを対象にオンプレミス上のシステムを実行し、その結果をもとの受信したメールへ返信し、さらにバックアップのコピーはSharepointへ取っておきたいとします。そのような場合は、Power Automateが元々持つDPA機能と今回リリースされたUI flowを組みあわせることが可能となります。


市民開発者でも、プロの開発者でも、誰でも使えるサービスとして生まれた

少し個人的なお話になりますが、前職がBig 4と呼ばれるコンサルティングファームの1社で勤務していたこともあり、直接的には関与していないものの、周辺にはBluePrismやUI PathなどのRPAを導入するチームが存在し、コンサルはこれらの資格を保有するように勧められていました。逆手にとると、このようなコンサルティング会社が携わらなければ、RPAが導入難しいということも意味しており、RPAの導入部隊は何十・何百というコンサルがお客様先へ常駐していました。


そんな中、このMicrosoft Power Automateは元から存在したサービスを拡張する方向性を取ったことで、誰にでもわかりやすい、直感的な操作で設定することができるため、いわゆる「市民開発者」(エンドユーザー)が設定することができます。RPA機能が搭載される前からすでに世界の月間利用者数は200万人を超えており、その数からもIT管理者だけが設定しているものではないことがわかると思います。

誰でも設定できるようになると、結果的に導入コストも時間もかからなくなります。それによって、今までスキルや工数が求められていたために、「採算が合わない」RPAシナリオでも、対応させることができます。


イノベーションは維持しつつ、カオスを管理する

市民開発者の思想を読んで、速攻でPower Platformを無効化した管理者の方々は多々いると思いますが、実際にはPower Automate・Power Appsには管理機能が搭載されています。テナントの中に「環境」を複数設けることで、特定の人のみが作成できるようにしたり、テスト環境・本番環境と分けることもできます。一番のおすすめは、サンドボックス環境・テスト環境・本番環境の3つに分けることです。


サンドボックス環境では期間限定付きで誰でもフロー・RPA設定が可能なエリアを用意することで、イノベーションを起こすことができ、そこからユーザーが申請を上げたフローはテスト環境へ移行し、無事にテストを終えたものだけを本番環境で利用するという流れが確立できるのです。これら環境はすべてどのコネクタを利用可能・不可能にするかも設定できます。

他社RPAの場合、元がオンプレミスの製品ということもあり、管理するためにクラウドを利用する形で、「〇〇マネージャー」や「△△ Orchestror」などを別途用意する必要があります。Power Automateの場合、根本的にクラウドサービスなため、ガバナンスは最初から標準搭載されており、GDPRなどに対応させる環境も整っています。

ガバナンス・運用に関する情報は、こちらの記事で詳細に取り上げています。

クラウド+オンプレ前提

上記の点でも述べた通り、DPAという位置づけから始まったPower Automateは、クラウドネイティブなサービスです。以下のアーキテクチャ図のように、Azure上で動作するPower Automateは、負荷分散(ロードバランシング)・スケールアップ/スケールアウトは全自動で行われます。そのため、専用のサーバや仮想環境を準備することなく、今すぐにでも利用を開始することができます。


マイクロソフトのセキュリティやその他のDNAが引き継がれる

Power Automateはマイクロソフトの純正サービスということもあり、マイクロソフトのDNAがそのまま引き継がれています。そのため、ExcelやSharepoint、OutlookやMicrosoft Teams等の既存のサービスとの親和性は非常に高く、開発チームレベルで共同で開発しており、シームレスな連携が可能です。