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Dynamics 365のリリースと合わせて発表された、Microsoft FlowとPowerAppsですが、これらサービスとPower BIを組み合わせることにより、従来の業務内容を簡素化、自動化することが可能となり、業務時間の割り振りをより生産性のあるものへとシフトすることが可能となります。今回は具体的な活用例として、予算管理について、どのように生産性が向上できるか考えてみました。

Excelから業務アプリ(予算管理アプリ)を作成

ほとんどの企業で毎年行われる予算管理ですが、各部門の担当者が作成し、それを上長が承認し、そのまた上長が承認し、やっと承認されたものが経理・財務部で集計され、取締役会での承認が…と非常に長く、時間が消費されてしまいます。また、予算という業務の性質上、「この数字は何を根拠に?」や、「今年の会議費が高すぎる。理由はなんだ?」等の議論が長々と繰り広げられるため、著者が見てきた企業で、予算が確定となるまで数ヵ月かかるといったところも少なくありません。

そこで、Dynamics 365+Office 365+PowerApps+Microsoft Flow+Power BIの組み合わせで何とかできないかを考えてみました。まずはグランドデザインがこちら:

PowerAppsで予算登録

PowerAppsで作成した専用の予算申請アプリを利用して、利用者には各予算の費用を月別で登録して頂きます。便利なのが、PowerAppsでは、OneDrive for Business上にアップロードしたファイルへ接続するテンプレートが用意されているため、非常に簡単にアプリが作れます。Excelにある項目を基に、PowerAppsは参照用のページと、編集用のページを作成してくれます。あとは表示させたい項目等の微調整をするだけです。

アプリはウェブブラウザー上でも動作しますし、モバイル端末(iPhone、Android)でも、もちろん動作します。以下の図は、予めOneDrive for Businessにエクセルファイルを作成し、それをPowerAppsで利用した例です。

元のExcelファイル:

自動で作成された、PowerAppsのアプリ:

Microsoft Flowで承認フローを設定

次に登場するのがMicrosoft Flowです。以下のように、PowerAppsでボタンを押すことをトリガーとし、上長への承認電子メールを送信します。承認結果はOneDrive for Business上のExcelで管理します。

ある特定の金額のときにだけ、更に上の上長からの承認が必要だった場合、Microsoft Flowの条件機能を利用することで、承認ルートを動的に値を基に変更するといったことも可能です。

Power BIでデータを可視化

可視化はPower BIからOneDrive for Business上のExcelファイルを参照させることで可能です。

Power BIのウィザードから、直接オンライン上の画面でOneDrive for Businessのデータへ、以下の図のようにアクセスできるようになっています。

そのため、ブラウザーを離れることなく、そのまま予算データのダッシュボードが作成できるようになります。データの更新も日次単位で自動的に実行することが可能です。これで、予算作成業務も経理ユーザーにとって非常に楽になりますね。

Common Data Serviceを活用し、Dynamics 365も既存のオンプレミスデータも一元管理

通常、1つのシステムですべての会社の業務を網羅することはできません。その結果、会計システムはオンプレミスの国産パッケージ(勘定奉行、Glovia、弥生会計等)を利用していて、営業管理はDynamics 365やSalesForce、予算管理は独自で作ったSQLサーバのデータという形で、利用者の方は各システムを参照しながら業務を進めていく必要があります。あるレポートを作るにはAシステムとBシステムを組み合わせないと見れないといったことも少なくないと思います。

Common Data Serviceとは?

そこでお話ししたいのが、「Common Data Service」という機能です。これは、マイクロソフトがPowerAppsと合わせてリリースした、クラウド上のデータベースサービスです。利用用途として、既存のクラウド・オンプレミス上にあるデータと連携し、1つの場所でデータを管理するために開発されました。

(Microsoft Ignite 2016のセッションBRK2140より抜粋・和訳)

このCommon Data Serviceを利用するための一番簡単な連携方法はMicrosoft Flowです。

Microsoft Flowには、100を超えるコネクターが用意されており、Common Data Serviceにも対応しています。そのため、今すでに別のシステムを利用されていたとしても、このコネクターを利用して連携すればいいのです。

(Microsoft Ignite 2016のセッションBRK2140より抜粋・和訳)

以下はOffice 365のSharePoint上へ新たなレコード(データ)が追加されたときに、自動的にCommon Data Serviceへ登録し、都度通知メールを配信させる場合の設定例です。このように視覚的にもわかりやすく、数分で設定することができます。

上記のように、各種サービスからデータを一元化させた後はPower BIと連携させて、可視化するのが一番です。現時点では直接Power BIから参照することはできませんが、2016年11月度のアップデートでベータ版のコネクターがリリースされましたので、近日中に直接接続できるようになることが想定されます。

データ損失防止ポリシー機能で、セキュリティにも万全対応

一見Microsoft Flowは便利なものの、FacebookやTwitterといったSNSとも連携できてしまうことに、懸念を持たれるのではないでしょうか。それを回避するためにCommon Data Serviceには、「データ損失防止ポリシー」機能が含まれています。この機能は、「ビジネスデータ」とそうでないデータを連携対象のアプリ単位で設定することができます。仮に利用者の方が、Dynamics 365のデータから、個人のDropboxのフォルダへ、顧客リストを更新するといったMicrosoft Flowを設定したとしましょう。このデータ損失防止ポリシー機能により、エラーとして処理され、未然にデータ損失を防ぐことができます。これにより、生産性を最大限に維持しつつ、セキュリティも担保できますね。