7月11日から14日まで開催された、Microsoft Worldwide Partner Conference 2016では、新年度を迎えたマイクロソフトの方針が多岐にわたり反映されており、その中でも今回目玉となったのが、7月6日に発表された「Dynamics 365」についてです。

この記事では、そのDynamics 365について、詳細説明があったセッションCE101「Capture the growing opportunity of business applications through Microsoft Dynamics」についてお話しします。

記事の元となっている情報は、こちらの動画からご覧になれます。

https://cdn.tri-digital.com/WPC/2016/CE101.mp4

市場の変化

現在市場が変化しつつあり、まず、クラウドソリューションの採用率がオンプレミス環境を上回るといった状況に成りつつあります。

そして、従来IT部門が管理していたIT関連の予算がITの管轄ではなく、利用している部門によって管理されるといった傾向にあります。

限られた従業員数の中で、競争が激化していく環境下でビジネスを拡大するためには、生産性の向上がより重要視されつつあります。

最後に日々生まれている、機会学習等の新たなテクノロジーや発明により、業務スピードがより速くなりつつあります。そのため、従来のように、ビジネスでの変化に合わせて、ITが数年かけて何かを開発するといった、時間の余裕がなくなってきています。

業務アプリケーションを利用した、デジタルな世界

従来の考え方では、営業支援システム(SFA)や、統合基幹パッケージシステム(ERP)は個別のシステムと考えられており、販売前の管理などは全て営業支援システムで登録し、その後の売上請求や、購買、在庫などは統合基幹システムでの登録となり、1つのシステムでは対応できていませんでした。そのため、データの拡散が発生し、状況が把握しにくいといった問題もあり、生産性の向上とは真逆を行ってしまいます。更に、業務特化型のアプリケーションを、各部署が導入してしまうことで、内部統制の観点からも、問題となり、いざ、データを他のシステムと連携するとなると、非常に難易度が高く、コストもかかってしまいます。

そこで今回マイクロソフトがリリースしたのが、Microsoft Dynamics 365です。各業務内容に特化しつつ、他業務とも連携します。

例として、フィールドサービス(保守業界)のエンジニアは、従来であれば、CRMのシステムを活用しますが、その場合、保守部品の在庫データはバックオフィス(基幹システム)側のシステムに情報があるため、直接参照できないといった問題にぶつかります。このような問題をDynamics 365は解決します。

Microsoft Dynamics 365のコンセプト

必要なもので

この製品のコンセプトとしては、まず必要なもの(モジュール)だけを利用して、その利用した分の費用だけを支払うといった、新しいコンセプトで提供します。

生産製を必要な時に

生産製を必要な時に提供するということで、例えば営業担当者が見積もり依頼をメールクライアントのOutlookで受信した場合に、従来であればCRMのシステムで見積書を作成し・・・といった流れでしたが、そうすることなく、Outlookから直接見積書が作成でき、販売情報と財務情報の両方を更新するといったことが可能になります。

組み込まれたインテリジェンス

Microsoftが開発した、Azure Machine LearningのアルゴリズムをDynamics 365に組み込まれ、営業ではアップセル、クロスセルといったことを提案してくれるような予測機能を備え、より速くアクションがとれるようになります。以下の例では、Dynamics 365(Project Madeira)が仕入請求の画面で、仕入業者を選択すると、リマインドとして、「選択した仕入品以外の物も不足しているため、追加しませんか?」といった、提案もしてくれます。

成長への準備

共通のアプリケーションプラットフォームやデータモデルが採用されていることで、いざ組織を拡張する必要性がある場合などに情報システムが対応しているため、より素早く、より柔軟にビジネスへの変化などにも対応できるということを意味しています。

Microsoft Dynamics 365の位置づけ

位置づけとしては、Office 365やPower BI、Cortana IntelligenceとAzure IoTと並ぶソリューションとなり、アプリケーション基板であるPowerAppsやMicrosoft Flowと連携し、共通のデータモデルを採用、そしてこれらのプラットフォームはすべてAzure上で稼働するといったコンセプトになります。

Microsoft Dynamics 365のライセンス体系

従来のライセンス体系では、業務、販売、フィールドサービス、顧客サービス等と各モジュールや機能といった「アプリ単位」でのライセンス購入も可能ですが、新しくリリースされた体系として、「お客様中心」のライセンス体系で、業務内容(ロール)単位で購入することができるようになりアプリを跨いだ利用が1つのライセンスで可能になります。

Microsoft AppSource

Microsoft Dynamics 365のリリースと併せてリリースされるサービスとして「Microsoft AppSource」もリリースされます。これは、Microsoft Dynamics 365でカバーされる各アプリ以外に、特定の業務特化型のアプリが必要だった場合に、検索し、導入することができる新たなアプリストアです。

導入すると、共通のデータモデルを活用するため、すぐに既存のMicrosoft Dynamics 365のアプリとも連携可能で、統合型ソリューション製品を更に拡張して利用できるといった画期的なコンセプトになっています。

すでに200種類以上のアプリがAppSource上でもリリースされており、http://appsource.microsoft.com からアクセスすることができます(現時点では日本語未対応)